とき皮フ科診察時間のご案内
とき皮フ科アクセスマップ

とき皮フ科治療案内

MedicalTribuneの座談会に参加

Medical Tribune(メディカルトリビューン):2004年10月14日
座談会  蕁麻疹の治療戦略 
提供:協和発酵工業株式会社

司会     夏秋 優 氏 兵庫医科大学皮膚科学講座助教授
出席者(発言順)   
土岐 真理子 氏 とき皮フ科院長
松本 玲子 氏 松本皮膚科院長
廣田 さち子 氏 広田皮膚科院長
増田 理恵 氏 皮膚科美川医院院長
(以下敬称略)









急性蕁麻疹は小児に多く、急性蕁麻疹は成人に多い
夏秋
初めに、先生方の医院を訪れる蕁麻疹患者さんの比率について、お話いただけますか。

土岐
今年1月から7月半ばまでに当院を受診された蕁麻疹患者さんは147人で、当院受診患者さん全体の2〜3%でした。急性蕁麻疹が50.5%、慢性蕁麻疹46%、コリン性蕁麻疹3.5%で、小児には急性蕁麻疹が多く、成人には慢性蕁麻疹が多い傾向が見られました。急性蕁麻疹の場合、小児の6割、成人の約7割は原因不明です。

松本
当院では蕁麻疹患者さんは全体の5%で、やはり小児に急性蕁麻疹が多い傾向がありましたね。

廣田
当院の蕁麻疹患者さんは全体の7〜8%、年齢別に見ると10歳以下が25%、10歳以上は75%ですが、成人のほとんどが慢性蕁麻疹です。小児の場合はアトピー性皮膚炎の合併が約75%と高く、成人の場合も約半数が鼻炎などのアレルギー疾患を有していました。

増田
初診の蕁麻疹患者さんを調べてみたところ、今年の上半期には急性蕁麻疹13人、慢性蕁麻疹10人の計23人で、これは同じ時期の初診患者さん全体の3%を占めています。15歳以下は4人でしたが、全員が咽頭炎などの炎症症状を伴い、感染症の関与が示唆されました。

小児の急性蕁麻疹は感染性を念頭に置く
夏秋
蕁麻疹の原因を探るのは非常に難しいのですが、いかがでしょうか。

土岐
お母さんから「かぜをひいて薬を飲んだ後に症状が現れたのですが、薬を飲み続けてよいですか」と質問されたときなど、感染性なのか薬剤性なのか診断に悩むことがあります。

松本
他院で処方された薬剤を飲んでいた方が、「薬を飲んでいたら蕁麻疹が出ました」と言って来院された場合には、その時点では薬剤性とは断定できませんが、「念のため薬を変えてください」という主治医あての手紙を持っていってもらうようにしています。

夏秋
小児の場合、発熱、咽頭痛があると小児科を受診されるので、明らかに感染性だと診断がつく患者さんを、われわれ皮膚科医が診ることは少ないのです。小児で急速に激しい紅斑、腫脹を認めるタイプでは感染性の可能性が高く、細菌感染が関与すると思われる場合は抗生物質による治療が必要です。おそらく感染性蕁麻疹の頻度はわれわれが思っている以上に多いので、小児の激しい急性蕁麻疹を診たら、感染性蕁麻疹の可能性も十分に考慮して治療に当たる必要があります。
また、従来、NSAIDsによる蕁麻疹はI型アレルギーやアスピリン不耐症が関与すると考えられてきましたが、最近はベースに存在する軽度のアレルギー反応がNSAIDsによって修飾されて蕁麻疹が出現すると捉えられるようになってきました。今後は蕁麻疹を多角的に捉えていくことが大切になってくると思います。


原因を突き止めることが難しい食物アレルギー
夏秋
食物アレルギーは、明らかに患者さん本人が原因を把握している場合を除いて、原因を確定できることは案外少ないと思うのですがいかがでしょうか。

土岐
小児の場合、「朝、○○を食べたら蕁麻疹が出ました」と、午前の診察終了直前に来院されることがあります。このように、直前に食べた物の場合は明快ですが、前日、2日前と時間が経過すると、その間にいろいろなものを摂られているため、原因の特定は困難になります。

夏秋
RAST法などにより、蕁麻疹の原因を突き止めることができたケースはありますか。

土岐
原因の究明を希望される患者さんはたしかにおられますので、実際に検査もしていますが、原因がつかめないことがほとんどです。

松本
蕁麻疹の場合、アトピー性皮膚炎に比べてRASTの陽性率は低いです。費用のことも考慮すると、患者さんが強く希望されない限りは検査しないのが現状です。

廣田
蕁麻疹であれば、抗アレルギー薬で治ることが多いので検査を希望される方はすくないですね。ただし口のまわりに蕁麻疹が出ている方は食物アレルギーの可能性が高いので検査を勧めています。


発疹が長びくタイプは自己免疫性の関与も考慮
夏秋
蕁麻疹といえば「個々の皮疹が24時間以内に完全に消退するもの」と定義されていますが、紅斑が長びくタイプを経験されることはありませんか。

土岐
環状紅斑型の蕁麻疹は長びくことが多いです。経口ステロイド薬を使用している間はおさまっても、中止すると再燃するため治療が難しいですね。

増田
ただの浮腫なのか、血管炎が関与しているのかわからないのですが、いわゆる蕁麻疹様血管炎のようなケースは、どのように治療すべきか悩むところです。

夏秋
発疹が長びく方のなかには、おそらく自己抗体を産生するようなタイプが混じっているのだと思います。抗核抗体やリウマトイド因子などの自己抗体の検索をすると高値を示すのですが、関節痛もなく膠原病の診断基準を満たすまでには至りません。ただし、今後は膠原病を発症するかもしれない予備群であると思われます。抗ヒスタミン薬でコントロールできない場合は、経口ステロイド薬を使わざるを得ないと考えています。
ところで、蕁麻疹には外用薬はあまり効果がないというのが常識的ですが、外用薬は使われていますか。

土岐
基本的には使いません。保冷剤などで冷やしてもらうようにしています。

松本
症状がひどい方ほど外用薬を希望されますね。急性期の一番つらい時期を出来るだけ楽に過ごすという意味で、ステロイド外用薬を使うことがあります。塗り方をきちんと指導したうえで処方しますが、ステロイド薬を塗ると蕁麻疹が即座に消えることが多いので、患者さんの満足度は高いようです。

夏秋
確かに外用薬を手にすることで安心される患者さんもいますね。

増田
私もステロイド外用薬を使っています。

廣田
私は、まず冷やすように指導したうえで、「蕁麻疹に外用薬は不要ですが、どうしますか」と聞いています。「それでも欲しい」と言われた場合は、弱いステロイド外用薬を処方しています。


第一世代と第二世代の抗ヒスタミン薬を組み合わせて使う
夏秋
抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬は種類も増えてきたのですが、特に第一世代抗ヒスタミン薬、第二世代抗ヒスタミン薬の使い分けはされていますか?

土岐
ファーストチョイスは第二世代抗ヒスタミン薬ですが、夜どうしても眠れないという方には、さらに第一世代抗ヒスタミン薬を追加するようにしています。

松本
第一世代抗ヒスタミン薬のほうがシャープに効く印象があるので、眠気が強くてもよいかどうかを確認し、「眠気が出てもよい」という方には第一世代抗ヒスタミン薬をファーストチョイスにしています。長びいた場合などには第二世代抗ヒスタミン薬を追加しますので、結局は両方を組み合わせて使うことが多いですね。

増田
私はどうも第一世代抗ヒスタミン薬のほうが速く効く印象があるので、まず第一世代抗ヒスタミン薬の即効性を期待しつつ、効果を持続させるために第二世代抗ヒスタミン薬を加えるようにしています。

廣田
蕁麻疹の場合は掻くとどんどん広がっていくので、まず痒みを止めるねらいで第一世代抗ヒスタミン薬を使っています。個人差もありますが、第一世代抗ヒスタミン薬だけを使っていると効果が落ちてくるように感じることがあるので、途中で第二世代抗ヒスタミン薬に切り替えています。

(以下省略)